幸せにする刺客、幸せになる資格
「しばらく、やりとりを聞かせていただきましたよ。どのようなご用件でお2人がいらしたのかは存じ上げませんが、自己中心的なやり方考え方は変わらないようですね」
『自分の息子のところにやってきて、何が悪いんですか?』

母さんは開き直るようにそう言い放った。

『今、ビジネスでやってきたって言ったじゃないですか。そこで何を思って母親面されているんですか?』

大和は理不尽な祖母の発言に苛立ちを隠せない。
ただ、敬語だけはきちんと使おうという心掛けだけは、すぐにでも褒めてあげたい思いだ。

『お前は黙ってろ。揚げ足を取られるだけだ』

父さんは母さんにそう言うと、僕に体を向き直した。

じっと父さんを見ると・・・格好は仕立てのいいスーツだが、白髪やシワが増えたと思う。
亜香里と大和と健吾達の結婚式で東京に行って際に実家を訪れて以来、約7年振りに会う自分の父親は、今年還暦のはずだ。

『ビジネスで来た割には、自分の息子である甘えもあり、アポイントなしで訪れた失礼はお詫びしたい。それなら正式なアポイントを取って、改めてお話させていただこうかと思うが、どうだろう?』
「どうして僕と話したいのか、その目的にもよります。アポイントは、その用件によっては、断ることも可能なはずですから」
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