幸せにする刺客、幸せになる資格
『分かった。なら来週の土曜日はどうだ?』

理解しているような素振りだが、自分本位にことを進めようとしている魂胆は見え見えだ。
僕にだって都合はある。
頼んでくる父さんが合わせるべきなんだ。

「あいにく、土日は僕も家族と過ごしたいもので、ビジネスの話はしたくありません。できれば平日にお願いしたい」

僕の言葉に少し顔を曇らせた両親だったが、秘書に確認をして連絡すると言ってきた。

「その際は、かならず何故僕と話をしたいのか、具体的な理由を教えてください。それが当然の流れですよね。大手食品メーカーの社長さんなら、それくらいはお分かりになるかと思いますが」
『それなら今、少しだけ話すと、お前のところのりんごから作った加工品を、うちの工場や倉庫経由で全国に流通しないか、ということだ』

"ビジネス"と言うからには、そんな話だとは思っていたので、全く驚く内容ではなかった。

「分かりました。ではアポイント、お待ちしております。連絡先はホームページに掲載してありますので、できればメールをください」

今日のところは両親にはおとなしく帰ってもらった。
ふたりは黒塗りの車の後部座席に乗ると、運転手は東京に向けて車を発進させていった。
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