幸せにする刺客、幸せになる資格
『どうしてこの時期になって、自分の会社にノリのりんごを取り入れようと考えたんだろう。しかもアポもなしに』

大和達と一緒に家に戻り、昼ごはんを食べ始めた。
他の子供達は既に食事を終えて、つい先程まで問答をしていた庭で遊び始めてすぐに亜香里が口にした疑問。

「僕が思う理由は2つ。ひとつは安西フーズは昨年度赤字決算を起こしているんだ。昨年夏に巨額の費用を投じた新商品が当たらなくてね。そこで自分の息子がやっているりんご園を使って安く原材料を仕入れて大きく利益を出す商品を生み出そうと考えた」
『そんなの、虫か良すぎるよ。父さんを虫けらのように追い出して、りんご園での仕事を蔑んで見ていたのは明らかなのに、軌道に乗っていることを知ると、甘い汁吸いたさに親の顔をして現れるってわけ?そんなの俺は許さないよ』

大和は憤慨している。
それにしても、難しい言葉を使うようになったな、と、親としては感心する。

「ふたつ目は、後継者の問題だ。後先考えずに僕を追い出したのはいいものの、紗英は婿ではなく日下家側へ嫁に行ったし、誠さんも後継者になることを強く固辞している」
『え?じゃぁ父さんを後継者にしたくて関係の修復を目指して接触してきたっていうこと?そんなの、あまりに身勝手すぎるよ』
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