幸せにする刺客、幸せになる資格
大和はそう言うと、立ち上がって窓の外を眺めた。

子供達が滑り台や縄跳びで遊んでいる。

『せっかく、幸せや沢山の笑顔がここにはあるのにそれをあの人達のせいで壊されちゃうの?』
『それは、いくら大手食品メーカーの社長でも、このりんご園は壊せないわよ』

大和の心配を、亜香里がすぐに否定した。

『これはノリだけではなく、この界隈のりんご農家全てに共通することだけど、基本的には育てた果実の殆んどは農協に預けて、そこから産地のみを特定して主には西日本地区に出荷がされるので、ノリの分だけを止めることは絶対に出来ないし、加工品も市販品としての流通経路を通らない直接販売だし』
『このまま、あの人達の提案に乗る気?』

大和は語気を強くして僕に迫った。

「まだ、話も聞いてないのに想像で話してはダメ。ビジネスとしてと言うなら、正規のアポイントさえ取ってもらえたら、聞いてあげてもいいとは思う。けど、少しでも不穏な空気を感じたら、即座に帰ってもらう。大和に嫌な思いは絶対にさせないから安心しろ」

大和の隣には、不安そうな琴乃ちゃんが座っている。
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