幸せにする刺客、幸せになる資格
「琴乃ちゃん、こんなことに巻き込んでしまって申し訳ない」
『いえ、私がここにいることも、おこがましいですよね。何なら私、帰りますけど・・・』
「いや、構わないよ。琴乃ちゃんが引いてしまわないかとむしろ心配しているけど」

琴乃ちゃんは首を横に振った。

『いえ、大和と、お父さんとの関係が私には羨ましいです。私も…父とはともかく、母とは仲良くいたかったです』
「そこで過去形にしちゃダメだよ」

琴乃ちゃんのお母さんは元々体が弱く、入退院を繰り返し、今年に入ってからは肝臓の機能の低下が著しくずっと入院したままだ。

肝臓移植の方法もあるが、琴乃ちゃんも親戚にも適合者がいなかった。

『母の肝臓は…最近になって分かったことなんですが、肝硬変と肝細胞ガンの合併を起こしておりまして…でも私、覚悟してますから』

お母さんが大変なのに、娘がここにいる。

『お見舞いは行っているの?』

亜香里が聞く。

『毎日ではありませんが、学校帰りに行ってます』
「今日は?」

今日は土曜日。
面会出来る時間はたっぷりあるはずだ。
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