幸せにする刺客、幸せになる資格
「大和、親をからかうとろくなことがないぞ」
『いいですね、その話。私はノリさんのおうち、羨ましいです。賑やかで、しかも私がやりたいと思っているりんごを作っているから』

涙を流したせいか、まだ目が赤い琴乃ちゃんだが、顔は笑っていた。

『私達、お母さんの前で誓ったんです。かならず勉強して一緒によりよいりんごを作り続けるって。そうしたらお母さんは"応援しているからね"って言ってくれました』
『俺も言われた。"琴乃をよろしくお願いします"って。コトのお父さんには会えていないけど、何か認めて貰えたような気がして、嬉しかったよ』

琴乃ちゃんのお父さんか・・・お母さんの病気をいいことに、外に新しく愛人を作り、同棲しているという話だ。

お父さんは、路線バスの運転手をしているらしい。

『私か高校生になってからは、父とは殆んど会っていません。家族を捨てたんです、あの人は』

琴乃ちゃんは吐き捨てるように言うけど、そこには一抹の寂しさがあるようにも聞こえた。

しかし、琴乃ちゃんはまだ未成年。
保護者の必要な年齢。

このままお父さんと疎遠でいるわけにはいかない。

「電話は、しないの?」
『元々、仕事の内容が内容なので電話で話すのは難しいんです。しかも仕事以外では愛人のところに行っているかと思うと…電話する気も起こりません』
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