幸せにする刺客、幸せになる資格
『せっかく一緒に食べようかと思ったのに、大和が恥ずかしがっちゃって』

このふたり、2年生になって違うクラスになってしまった。

部活動漬けがたたって成績が下がり、勉強との両立が難しいと判断した大和くんは、2年生になる前にサッカー部を退部。

放課後は勉強に費やすことにしたそうだ。

でも…前ほどは離れの2階で琴乃ちゃんと一緒に勉強するスタイルはなくなったような気がする。

「今日はこれから、勉強?」
『うん。いつもなら図書館に行くんだけど、今日は同じ考えのヤツらが多くて混んでそうだから、離れの勉強部屋でしようかと思って』
「最近、あんまりふたりであの部屋に行くのを見なかったような気がするけど、久しぶりじゃない?」

琴乃ちゃんが広げたお弁当に"すごい綺麗だね"と誉めつつ、私は聞く。

『まぁ、それは、ねぇ…』
『…』

ふたりとも私の尋ねに歯切れが悪い。
すると、

『ふたりきりの密室じゃ、誘惑が多いからだろ?アハハハ』

外の見回りから帰って来て早々、挨拶代わりにノリが言った言葉は、最早親らしいそれではない。

でもノリの言葉で、大和くんたちが勉強部屋ををあまり使わない理由がはっきり分かってしまった。

好き合う男女が密室ですることはひとつと言うことか。
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