幸せにする刺客、幸せになる資格
「ごめん、変なこと聞いちゃったね」
『いや、いいんだ。俺がもっと大人なら、サラっと言えるんだろうけど、まだちょっとね…』

琴乃ちゃんに至っては、目の前のお弁当を見つめるように俯いてしまった。

『君が鈍感過ぎるから、琴乃ちゃんが恥ずかしがっているじゃないか』

するとノリはさらに"大和はいつまでも子供じゃないんだよ"と耳打ちされた。

そうだ。
私がふたりの年齢の頃には考えられなかったけど、周りの同級生たちには確かに"大人な関係"になっている人はいた。

『俺がサッカー部を辞めたのは勉強に専念するためだけじゃなくて、コトとの時間が1分でも多く欲しいからって言うのもあってさ。お母さんのこともあるし、少しでも一緒にいたいから』

お昼ごはんを食べ終えて暫くすると、玄関のチャイムが鳴った。

…いよいよノリの両親のお出ましだ。

外へ出ると、そこには秘書らしき男性。そしてこのりんご園の景色には全く相応しくない黒塗りの高級外車からはノリの両親がそれぞれのドアから降りてきた。

ノリは、

『お待ちしておりました。遠いところありがとうございます』

と、白いシャツにGパンで両親を出迎えた。
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