幸せにする刺客、幸せになる資格
「ありがとうございました」
『いえ、この仏壇に手を合わせたのは、ずっと僕達親子と爺ちゃん婆ちゃんだけだった。先日やっと、妹夫婦が手を合わせたけど、それでも以上6人だけ。亜香里さんが7人目です』
「そうなんですか」

大和くんのお母さんには、親戚や友達がいないのだろうか。

『向こうのお寺さんのところにある墓には、毎年命日に墓参りに来てくれる男はいますけどね』

そう言うと、ノリさんは仏壇を前に、過去の話をしてくれた。

大和くんのお母さんである、伊達紅葉(ダテ モミジ)さんは、ノリさんが当時通っていた高校の正門向かいにあった定食屋で働く看板娘だった。

気立てが良く明るい性格の紅葉さんのことは、通う高校の生徒たちの憧れの的だった。

そんな中、彼女のハートを射止めたのは、ノリさんの幼稚園時代からの友人である、健吾さんだった。

『健吾は自分から紅葉に告白したわけではなかったらしいのですが、紅葉が何となく誘った形みたいで』

ところが、紅葉さんも恋愛には奥手で、お互いに前に進まないまま半年ほどが過ぎた。

『学校では有名だったんです、健吾と紅葉のカップルは。でも、嫌われるのが怖くて、なかなか体の関係に持ちこめなかったみたいで』
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