幸せにする刺客、幸せになる資格
『ところが医師も、僕も、本人も予期しない事故が起こった。思ったより紅葉の心臓弁膜症の症状は進行していて、帝王切開で必要な麻酔を投与したショックで、お腹を切る前に即心停止を起こしたんだ』

妊娠中のためCTやレントゲンの撮影も紅葉さんは拒否したため、医師も正しい診断ができなかったことも、事故を起こす原因となった。

『紅葉が色んなことから胎児を守ったので、子供は無事だった。でも、母体は・・・必死の蘇生術の甲斐もなく、紅葉の命の火は消えた』

手術日は決まっていたので合わせて健吾さんも病院に来た。
ところが知らされたのは・・・紅葉さんの死だった。

『僕は当然ショックだったけど、アイツは、僕以上に泣き崩れたんだ。この世の終わりが来たかのように、待合室の椅子で声を上げて泣いたんだ』

それから、生まれた男の子には"大和魂"から取って"大和"と名付けた。

『大和には、僕のような恵まれた環境で育つことができないことを覚悟していたから、魂を持って、力強い男になってもらいたくて』

幸いなことに、大和くんの体には全く異常がなく、退院することができた。
ところが・・・母親が初めからいないので、ノリさんが付きっきりにならざるを得なかった。
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