幸せにする刺客、幸せになる資格
大和くんはお婆ちゃんに任せていたが、老体に鞭を打ってくれており、ずっと任せておくわけにはいかない。

大和くんが1歳を迎え、摘果が始まるのを前に保育園に預け始めた。

りんご農家として修業をする日々。

その年の冬にりんごジュースやりんごジャムをネットで販売をし始めたところこれが大当たりし、2年後にその収入を頭金にしてこの家を建てた。

『それまでは蜂矢さんの家の一角に住まわせて貰っていたから、申し訳ない気持ちでいっぱいでさ。大和と2人、家を構えてがんばって行こうと思ったんだ』
「努力の賜物なんですね、この家」

元々、尊敬していたノリさんは、私が思っていた以上に苦労人だった。

『ありがとう。亜香里さん』
「え?」
『僕のこんな話に、泣いてくれるなんて。君の心が美しい証拠だ』

そう言うとノリさんはろうそくの火を消して、香炉の線香が灰になっているのを確認して、仏壇の扉を閉めた。

『きっと今、僕と紅葉の話を亜香里さんにしたことを、紅葉も見守ってくれたと思う。でもここから先は、僕と亜香里さんの2人で話したい』

そう言うとノリさんは、私をリビングのソファーに座るように導かれた。
でもいつもと違うのは、座った位置。

向かい合わせではなく、隣同士で座っている。
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