幸せにする刺客、幸せになる資格
それに引き換え私は…高校まではここ、安曇野で育った。
この町はのどかで水や空気も美味しい。

でも私も周りと同じように、都会への憧れから、大学は東京にした。

4年の間、それなりにバイトをこなし、それなりに遊んだ。

他の学部や他の大学との合コン。
サークル仲間との旅行。

男性ともそれなりに付き合った。

でも、3年生を迎えて、段々億劫になった。

どこへ行くにも人混みと空気の悪さ。

正月や夏に実家に帰ると、その都会の喧騒から解放されたようにホッとした自分がいた。

間もなく就職活動が始まる。
このまま東京に就職したら、私は窒息する。

そう思った私は、地元の農協に就職した。

松本の本店にいた頃は、大変だった。
色んなお客様との接客、保険商品のノルマもあり、閉塞感を味わった。

3年間を本店で過ごし、安曇野支店に異動してからは、俄然この仕事が楽しくなった。
担当の農家の人達とも割とゆっくり話せるし。

特に、ノリさんに会ってからは、こんな人当たりも外見もパーフェクトな男性がどうしてIターンをしてりんご農家になろうと思ったのか。
しかも成人もしていない、高校卒業してすぐというタイミングで。

大和くんの存在のこともあるんだろうけど、私はノリさんにとても興味があった。
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