幸せにする刺客、幸せになる資格
『列席者の中に、昔の知り合いがいたの?』

私の両手を握るノリの口調は、あくまでも優しい。

黙って頷いた。

『嫌な過去を思い出させてしまったみたいだな。ごめんな』
「どうしてノリが謝るの?」
『君の過去をろくに知らないくせに、僕の友人の結婚式に連れてきてしまった浅はかな行動を詫びているんだ』
『亜香里ちゃん、怖いの?』

大和くんまで心配してくれている。

「大和くん、ごめんね。私が、昔怖いって思ったお兄ちゃんがいたの。でも怖いのは私だけで、大和くんには違うから」
『それって誰なの?僕がやっつけてくる』

と、大和くんが立ち上がった。

『大和、座れ』

ノリは私から視線を離さないまま大和くんを再び座らせた。

『亜香里、今日は休もう。元々このホテルに宿泊予定だけど、早めにチェックインできるか確認するから』
『その必要はないよ』

後方から声がした。
…健吾さん?

『亜香里さんが心配するようなことは何もない。中に入ってみてください』

健吾さんからの言葉。
決して強制的なものではないことは分かっていた。

けど、新郎に気を遣わせちゃいけない。
だから私は健吾さんに従った。

「はい。ご心配をお掛けしました」

再び会場に入ると、私の全身が震える空気は消え去っていた。
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