幸せにする刺客、幸せになる資格
リビングに通される。
テレビがブラウン管から液晶に変わっていること以外は、9年前と変わらない。

『お父さん、急に会社に呼ばれてしまいまして。2時間くらいで戻るって話だから、座って待っててくださいね』

亜香里に合わせているのか、母さんは敬語だ。

僕達にはお茶、大和にはオレンジジュースを用意してくれた。

「紹介するよ。彼女の山形亜香里さん」
『よろしくお願いいたします』

深く一礼した亜香里。

『ようこそ、今日は東京までありがとうございます』

母さんも亜香里に合わせた。

「あと、ここにいるのは、息子の大和」

亜香里の真似をして、礼をした大和。

『まぁ、おいくつ?』
『8歳!』
「小学校3年生だよ」

母さんは大和をじっと見た。
大和はその視線に耐えられず、亜香里の手を握りながら顔を逸らした。

「母さん、やめてくれよ。大和が怖がっているだろ?」
『だって、同じ歳のころのあなたに似ているものだから・・・』

僕と大和は、目と顔の輪郭は一緒だから印象はそっくりに見えるのだろう。
でも良く見ると、鼻と口の形は僕と違って、母親そっくりなんだ。

僕は鷲鼻だけど、大和は鼻筋がこの年齢にしてスッと通っている。
口は僕はただ薄いだけだけど、大和はアヒル口。
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