幸せにする刺客、幸せになる資格
『きっと将来はいい男になるわよね』

母さんはそう言って場を盛り上げようとしてくれている。
でも、顔がどこか寂しげなんだ。

『あの時の決断のせいで、大和くんには苦労させてしまったのかも知れない。そう思うと、こみあげてくるものがあるわね』

母さんはそう言うと、手元のハンカチで目頭を押さえた。

『ここだけの話、私はまだ半人前のあなたをこの家から追い出すのは反対だったの。でも、お父さんの言うことには勝てなかった。本当にごめんなさい、ふたりとも』

母さんは大和にも詫びているけれど、大和にしてみれば、謝られる理由が分からない。

『何であやまるの?』

大和にそう言われて、母さんは気付いたようだ。

『大和くんは、今、お父さんといて楽しい?』
『うん!お父さんと亜香里ちゃんとスノボーとかやったり、おうちでパズルやったりするのたのしいよ』

大和は正直に話した。
でもそんな意図はないけど母さんは再び目頭を押さえた。

『お友達は?』
『ダイちゃんとかまっちゃんとかいてね。僕、サッカー始めたんだ』

大和は3年生になって、地元の少年サッカークラブに入った。

『あら、ノリと違って活発ね。大和くんのお父さんはおうちで遊んでいるのが好きな子供だったのよ』
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