幸せにする刺客、幸せになる資格
―バタン―

玄関の扉が閉まる音。

『大和くんは、全て分かっているような感じだよね』
「普通小学校3年生であんなこと言えるか?」
『大和くんは普通じゃないんじゃない?いい意味で』
「どういうこと?」

僕が小学校3年生の時、色だの恋だの全く分からなかったように思う。
けど、大和は分かっている風だ。
大和には好きな女の子でもいるのだろうか。

『ノリと大和くんを見ていると、何か親子って言うより、兄弟って感じ』
「そうか?アイツのおむつ取り替えたりミルクあげたりしたのはこの僕なんだけどな」
『頭では父親なんだけど、互いに話す内容は兄弟だよ。でも楽しそうで羨ましい。そしてそういう関係になったのは、やっぱり2人でこの地で頑張ったからだと思うし』

亜香里はそんな僕らを理解した上で、僕との結婚を承諾してくれたんだ。

『私、そろそろ行かないと』

亜香里は仕事中。
ここに長居するわけにはいかない。

『また、ここに来ますから。その用紙、記入しておいてくださいね』

急に仕事モードになった亜香里に僕は"うん"としか言えなかった。

目の前にあるのは、大和の学資保険の変更届。
金額を増やそうと思っている。

こういう書類に、亜香里の名前を書く時が来るんだろうか。
そう思うと、嬉しくてたまらなかった。
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