幸せにする刺客、幸せになる資格
シードルは発泡酒の試作品。
瓶自体は小さなものなので、2人で飲めばすぐになくなる。

ノリも私もほんのり酔った。
けど、記憶や理性を失うほどではない。

私達は元々ソファーの隣同士に座っていたけど、飲み終えたグラスをテーブルの上に置くと、ノリは私の両肩を自分に向かせ、黙って唇を重ねてきた。

『やっぱり今日、亜香里に泊まって欲しいと言って良かった。入籍した当日くらい、一緒に夜を過ごしたいし、その先も止まらないと思ったから』

深い大人のキスを落とした後、明らかに欲情しているノリの表情は、私の理性を簡単に崩す。

『大和は寝た。ここからは大人の時間であり、夫婦の営みの時間だ』
「何かその言い方、イヤらしい」
『僕はいたって真面目だよ。今日は新婚初夜だから』

そう言って2階の一番奥にあるノリの部屋に導かれた。

去年のクリスマス前にノリとの初めてをここで過ごしてから約半年。
その間に何度もここで交わった。
大和くんが不在か、寝ている時・・・

でもけじめをつけて、これまでは泊まることはなく、日付は変わってもきちんと家には帰っていた。

今日は、夫婦になった記念日。
ここで一緒に朝を迎えよう。
それが私達の一致した意見だった。

そして、この日は夜が明けないで欲しいと思った。
何度も、何度も・・・
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