幸せにする刺客、幸せになる資格
『お兄ちゃんも大変だね』
『さ、出来ました。皆さんはそちらのソファーに座ってください。子供達はダイニングに座らせますので』

亜香里はこの6年ですっかり母としての貫録が備わった。

カズが生まれた後、1ヶ月の間を開けて、初めて亜香里と交わった時、少し彼女にはそれまでになかった遠慮があった。

声を出さず、乱れることを我慢しているように見えたんだ。

だから僕は言った。

「こうしている時は母親であることを忘れろ」
『え?』
「"女"になれよ、亜香里」
『でも、こんな私、女には見えないでしょ』

バカだなぁ、亜香里。
無事にカズが生まれて、君もこうして元気でいることは、僕には何よりの喜びなんだ。

「この1ヶ月の君は、最高の"母の顔"をしている。でも、それが僕には"女"としての魅力が増す要素になっているんだ」
『ノリ…』
「だから正直、カズが生まれる前より、今の亜香里に…僕は欲情している」

その…自然体で愛し合った結果が、今の幸せなんだ。

『世の中のお母さんより、私は凄く恵まれています。常にノリがそばにいますから』

子供達のためにリンゴジュースをコップに注ぎながら、亜香里は健吾達に言う。
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