幸せにする刺客、幸せになる資格
『うちはマリひとりかな』
「これからお前達だって分からないでしょ。玲奈ちゃんは仕事辞めたし、まだ若いし」
『そうなんです。今、健吾におねだりしてます』

今の会話、小声で話していたつもりなんだけどな。

「聞いてたの?」
『はい、全部』
『コイツ、"ダンボの地獄耳"なんだよ』

"ダンボの地獄耳"って、つまりはただでさえよく聞こえる耳である上に、人の話を盗み聞きするということか?

『すみません、人の会話を盗み聞きするのが癖で…』
『それは玲奈、直したら?』
『地獄耳は簡単には直らないよぉ』

子供達は大人の会話には興味がないみたいで、カズが"早く食べたい"と言ったことがきっかけで、みんなで"いただきます"となった。

大和はヒヨが食べているのを見守りつつ、自分も食べる。

「テツやマサは元気?」

僕には、ナルガクの幼稚舎の頃からの親友が健吾以外に2人いる。

紅葉の件でそのふたりとも仲違いしていたが、健吾の口添えで、年賀状のやりとりはするようになった。

『あ、テッちゃん達、今日行きたがってましたよ。ノリさん、テッちゃんの奥さんが私の同級生だって知ってましたっけ?』
「いや、初耳だよ。美郷(ミサト)ちゃん…だっけ」

僕は大和とヒヨの様子を見守りつつ、玲奈ちゃんの声に耳を傾ける。
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