恋輪(RENRIN)
机の上に乗る香水ボトル

くるくるとふたを開け

中蓋もこじ開けた。


部屋に充満する香水の香り。


「わ、きついな」

ガラリと窓を開けるとそれがだんだんに薄まる

目をつぶってボトルを逆さにして

窓からこぼした。


手に伝わるドクドクと液体の落ちていく感覚

ああ、これで終わりなんだな。



バイバイ亨ちゃん。


バイバイあたしの初恋。



外から名残惜しそうにふわりと香る


「結構好きだったなこの香り」


でもいいの。


これは彼女の香りだった。


あたしのものじゃない。



いつか私を大切にしてくれる誰かに、

愛される香りを

私のための香りを手に入れるから。


本当のあたしの


甘い恋の香りを……



(甘恋   END)









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