恋輪(RENRIN)
階段を駆け降りる

「亨ちゃん!」


玄関を開けようとしていたところだった。

「綾音」

「おめでとう!」

「うん」

「彼女さん!亨ちゃんをおねがいします!」


「はい」

私を見つめる優しい瞳がとびきり素敵だった。

彼女は静かに頭を下げると


「じゃあな」

扉の向こうから差し込む光に溶け込んで二人は出て行った。


ドアが閉まった瞬間

ぶわっと涙があふれた。



こぼれる涙が止まらない。

かわいそうなあたし

かわいそうなあたしの恋

だけど、

がんばったでしょあたし。

恋は叶わなくったって亨ちゃんの特別なあたしでいられるでしょ?













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