もう一度の恋
バタバタと朝は忙しい。美佐子が俺や子供達のために朝飯を作っている。 「母さん、早く!」哲夫がボサボサ頭で、慌てて 二階からおりてくる。美雪は早くからクラブ活動とかで、もう学校へ向かって出ていった。哲夫はトーストを片手に走りながら出て行こうとしている。
「ほんま、毎朝やかましいな〜!あいつ目覚ましかけてないんかいな。」美佐子は笑いながら、「パパと同じよ。あなたも遅刻よくしてたじゃない。やっと最近一人で起きれるようになったくせに。」美佐子がコーヒーをいれてくれた。美佐子は散髪をしたようで、髪は短くなった。少し歳をとったが、若い頃と変わりなく綺麗だ。自分の嫁さんとはいえ、最近とくに美佐子と結婚できた俺は幸せ者だと自画自賛する。
朝飯を食べて、俺も出勤だ。家から10分歩いて駅へ向かう。電車ラッシュと戦いながら、会社へと向かう。
いつものように、電車に乗り込む。今日もめちゃめちゃ混みやがる。かなわん。ガタ!と大きな揺れに俺も揺れた。「いた〜い!」若い女の声が、すぐ後ろから聞こえた。周りの乗客も注目する。俺は振り返り女と目をあわせた。「あんたねぇ!足踏んだんだから謝りなさいよ!」「あ、すんません。揺れて足踏んだんですね。」「もう!朝から嫌やわ!」俺よりかなり若そうなショートカットの小柄な女が、怒っていた。
気まずい雰囲気の中、降りる駅に着いた。なんと、その女も同じ駅でおりたが雑踏に消えていった。彼女に悪いが、俺も踏みたくて踏んだわけじゃない。悪人のように睨まれて、俺も朝から運がない。
「見ましたよ〜佐藤係長〜!」後輩の柳沢がニヤニヤしながら声をかけてきた。「そんなもん、しゃーないやないか!満員ラッシュやねんから、足も踏むがな!」柳沢とどうでもいいような話しをしながら、会社についた。
俺は営業二課の係長だ。一課は主に大きな企業相手だか、俺の二課は中小のスーパーや個人経営の店を相手に営業する。営業といってもいろいろだ。商品を売り込むために接待や雑用をして、相手にまず俺達を気に入ってもらう。無茶苦茶なことを要求してくる奴もたくさんいる。今日も大変な一日になりそうだ。

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