赤い流れ星3




「あ…あの、兄さん……」

「なんだ?」

「私、今日、帰りに……」

言い出し難かったけど、とりあえず言っとかないとまた叱られるから、私は意を決し、兄さんの部屋を訪ねた。
予定通り「本屋に行く」という口実にしておいて、その後もついうろうろしてしまったことにすれば良い。
私が出掛けるとついだらだらしてしまうことは、兄さんも知ってるから、そう言っておけば疑われることはないと思う。



「ちょうど良かった。
そのことだがな…今日は俺も早くに出られるから、買い物に行くぞ。」

「え……!?」

兄さんは私が話し終える前に勝手なことを言い出して、私は思わず点になった目で兄さんをみつめた。



「おまえ、化粧品も持ってないって今朝言ってただろう?」

「え…あ、あぁ、そ、それはそうなんだけど……
な、なにも今日じゃなくても、だ、大丈夫だよ。」

「おまえは良くても、俺はそんなに暇がないんだ。
行ける時に行っとかないとな。
ちょっと早いが、仕事はもう良いからすぐに着替えて来い。」

兄さんは机の上の書類をまとめながら、私にそう指示をする。



「は…はい。」

なんてこった。
こんな展開、予想もしてなかったよ。
何か買ってもらえるのは嬉しいけど、なんでまたよりにもよって今日なんだ?
って、今はそんなこと言ってる場合じゃない。
とにかく急がなきゃ。
待たせたら、また兄さんに叱られる。
あ、そうだ!野々村さんにも連絡しなきゃ!
あぁぁ…シュウさんのこと、相談したかったのに…!
仕方がない。
野々村さんには帰ってから電話して相談に乗ってもらおう。

半分パニックになりかけながら、私はとにかく大急ぎで帰る支度に取りかかった。
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