赤い流れ星3
side シュウ




(……間違えたとでも言うか……)



昨夜の俺は本当にどうかしていた。
なぜ、プライベートの方の名刺を渡してしまったのか、どう考えてもわからない。
あの後もなんだかぼんやりしてしまって、仕事に集中することさえ出来なかった。

しかも……ひかりからはあれ以来何の連絡もない。
普通、送ってくれてありがとうくらいはあるんじゃないのか?
なのに、そんな一言のメールもなかった。
こんなことは初めてだ。
プライベートの名刺を渡して、何の反応もないなんて……
それも、相手はあんなアニメオタクのダサい女だぞ。
一体、どういうことなんだ!?

さらに、悪いことには、高見沢大輔から突然メールが届いた。
なんでも、大河内さんに聞いたとか言ってたが、あの爺さん…なんで、そんな勝手な事を……
俺のプライベートな情報は誰にも漏らさないように伝えてあったのに……



(厄日だ……
きっと、昨日はよほど運の悪い日だったんだ。
そんな日もあるさ。
そうだ…高見沢大輔だって、特別おかしなことを言ってくるわけじゃない。
気にすることなんてない。)



そう考えたものの、やはり、もやもやとした気持ちは晴れず……
俺は、店に出る前に、買い物に出掛けることにした。
買い物はけっこう良い気分転換になる。
好きなものをものを好きなだけ買って、この鬱陶しい気持ちを振り払ってしまおう。







(ちょっと買い過ぎたか……)



調子に乗って、少し買い物しすぎた。
こんなことなら、良太でも連れてくれば良かったと後悔しながら、俺は両手にいっぱいの袋に苦笑いを浮かべた。
でも、この買い物のおかげで気持ちはすっきりした。
細かい事を気に病むなんて俺らしくない。



(さ…今日も頑張らないとな…!)



そう考えて顔を上げた時…俺は信じられないものを見てしまった。
ひかりが……男と歩いていた。
しかも、相手はひかりとは不釣合いなイケメンだ。
俺は、思わず物影に身を隠した。



なんとも言えない怒りのようなものが俺の心をたぎらせた。
なぜ俺が隠れなきゃならないんだ?
しかも、俺はすっかり騙されていた。
まるで、男と付き合ったことがないような初心な女のふりをして、あいつ、実際はけっこうしたたかな女だったのか……



(そんなことも見抜けないなんて……
俺は今まで一体何をやって来たんだ!?)



心の底から腹が立った。
ホストとして働いて来た年月がすべて無駄だったように思えて、俺は打ちのめされた。
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