【短編】愛して欲しい。
「どうしたのって、お前……。急に居なくなってたら焦んだろ、普通」
この答えは天然なのか?
「ごめん。用事思い出してさ」
「用事? あー……戻って来れねぇの?」
ちょっと強引。
これをココで使うのか疑問に思った俺は慌てて言葉を付け足した。
「話もあんだけど」
「話? 何の?」
そりゃ、確かにその答えが帰って来て当然だよな。
「……あ、うん、まぁ、それは会ってから」
あえて濁すのは、電話なんかじゃ伝わらないって思ったから。
直接会って言わなきゃ意味がないって思ったから。
「ごめん……今日は無理」
「他の……男んとこ、行くの?」
プツ、プープープー……
俺の小さく吐き捨てるような言葉と機械音が聞こえてくるのは、ほぼ同時だった。
『ごめん……今日は無理』
その言葉の後、俺の言葉を聞かずに切った?
それとも……。
駅の少し手前。
その言葉だけを頼りに走って追いかけた。
男は時に強引じゃなきゃ駄目なんだろ?