嘘つきラビリンス
「だから集ってきたのがあの程度だったんだよ? 僕に指名が入って席を抜けるとすぐにボトル入れられたり。アレもいくつかキャンセルしたんだから感謝してよ」

「……そう、なんだ」

「じゃなかったら55万なんかで済むわけないでしょう?」


……ダメ。全然覚えてない。

ってか、ホストクラブの相場ってどうなってんの!?


「挙句、お店で完全酔いつぶれちゃって。あんなのどこかに売られたって文句言えないよ?」

「う、売る!? え? ど、どこ、へ――」


そう聞こうとすると、トーマはさらに薄気味悪い笑みを浮かべたから私は自分の口を塞いだ。

聞いちゃダメ。こういうのは聞かないほうがいい、うん。


「だけどね? 恋羽さん」

「は、はいっ!」


名前を呼ばれて思わず答えると、トーマは出会った時の人懐っこい笑みを浮かべる。


「僕は恋羽さんが気にいったんだ」

「はい!?」
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