Only

その様子を、光が横目でチラッと見てた…気がした。


連れてかれたのは、体育館倉庫。

この時間は屋台準備で、みんな教室か、外にいる。

誰もいない体育館倉庫で、大地が大きくため息をついた。

「…大丈夫か?」

心配そうな、切なそうな顔をする大地。

「うん、大丈夫だよ?」

ふと、昨日寝る前に考えた事を再び考えた。


…もし、大地を選ぶ事を決めたら…

あたし、すごくズルい人になる。

でも………

暗闇に、明かりが灯る。


嘘をついて大丈夫だと言い張るあたしに、大地は何か考え事をして。


「ごめん、もう限界」


聞こえるか分からないほど小さな声でそう呟いた。


唇に柔らかい感触。

あたしの左手は大地の右手の中。

頭が…真っ白に染まる…


唇を離した大地は、あたしの肩を両手で掴んで。

「…俺を選んでよ。もう、アイツの事で泣かないで…ほしい」

かすかに、そう囁いた。



…あたしは。

この人を信じたら。

これ以上傷付かないんだろう。

そう思った。


「大地………あたし、ね」


この人なら。

もう一度………


< 202 / 308 >

この作品をシェア

pagetop