Only
光の唇があたしの唇に、優しく触れた。
拒むことの出来ない、哀しいキス。
あたし達、駄目なのに。
これでも兄弟、なんだよ…?
あたしの心は。
パラパラと音をたてて。
また崩れかけていた。
「輝…。俺、さ。ちゃんとお前と話したかった。誤解を…解きたかったんだ」
そう言いながら、あたしの手首を放す光。
ゆっくりと顔を上げると、泣きそうな顔をした光があたしを見ていた。
「俺。今星野ってやつと付き合ってる。それは認める。でも…俺はお前が…」
「光」
光の話を遮るように言う。
…これ以上は、聞いちゃいけない。
今度こそ、自制が効かなくなる。
そうなったら手遅れ。
「あたし、もう忘れるって決めたの。それで…大地を選んだ。だからもう、何も弁解する必要はないよ?」
「俺は…」
「いいの。忘れさせて。あたし決めたから。
…ほら、ご飯だから1階に下りよう?」
光の顔は見ないようにして。
そう告げた。