Only

「…俺、部屋戻るわ」

何も言えない俺から手を離して、部屋を出ていく大地。

…普段喧嘩なんて滅多にしない俺。

況してやその相手が大地で…

「なあ光」

すると突然、部屋に戻りかけてた大地が振りかえって言った。

「俺は、真っ直ぐにぶつからない奴は嫌いだかんな。そんな奴ほっとく」


…大地…?

「大地お前、それって…」

もしかして、と思い確認をとろうとすると

大地は哀しげに笑って部屋に戻っていった。


…ベッドで寝息をたてて寝てる輝の方へと足を運ぶ。

綺麗な寝顔。


“俺だって…輝と付き合ってっけど、不安ばっかなんだよ…”


…輝。

お前の、本当に好きなヤツは誰なんだ?

もしかしたら、大地なのかも…しれない。

だとしたら。

コイツの幸せを奪ってる事になる。

でも…

“俺は真っ直ぐにぶつからない奴は嫌いだかんな”


…大地。

お前の言いたい事って…

まさか、俺の背中を押して…?


バカかよ、アイツ。

こんな俺に、チャンス与えんじゃねーよ…


「……っ」

気がつくと、声を出さずに泣いていた。


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