理想の都世知歩さんは、
「うげ」
暑いけど、大好きな夏の休日。
始めは居間の隅のスペースを拝借して荷物やら何やらを積み重ねていたけれど、気を遣ってくれた兄ちゃんが隣の自分の部屋を譲ってくれた。
只管申し訳ない。
その部屋で寝転んだら、出るに足らないベランダの蒸した風に吹かれたぱんつが一枚。目に留まった。
それはたった今当番の兄ちゃんが干し終えた洗濯物で、彼はベランダ口に置いていた洗濯カゴを手にして私の横を通り過ぎたところ。
「何。産毛?」
そりゃあとんだ聞き間違いだ、兄ちゃん。
身体を起こした私は表情無く、「兄ちゃんのあの、ピカーッて目のヒーローの顔が沢山ついたぱんつ。どこかで見たなって思ったら」と続ける。
「とよちほさんと、色違いなんだ……」
「へー!トチホヨさん」
「惜しい!都世地歩さんです」
兄ちゃんは天然の類ではないと思うのだけど、毎回都世地歩さん話を聞いては頷く割になかなか名前を覚えない。
「引っ越しても同じようなぱんつ見るとはなかなか気持ちが悪い」
「いい趣味してると思うけど。トホヨチさん」
「うんだから都世知歩さんね兄ちゃん。というかそっちの方が言い辛いよね」
「うん、舌噛みそ」