理想の都世知歩さんは、
「でも一度会ってみたいっていうか、挨拶しないとなー」
そう言ってカゴを戻しに部屋を出て行く。
私は薄青い空を見上げて暑いなぁ、と呟いた。
「あこめー」
「はぁーい」
居間から聞こえる声に、寝返を打って上半身を起こす。
雨量が多いと云われた梅雨が通り過ぎた。
いつの間にか、夏になっていた。
蝉が鳴いている。
……というか今もすぐ其処の網戸に張り付いている。
そこには、それだけ。