理想の都世知歩さんは、




その瞬間。



崩れかけていた何かが、壊れかけていた何かが、――――想いが。


溢れ出す。



「…………っ、……ぅ」



衵が瞬きをして涙を零したのを最後に。


抱き寄せて、


閉じた瞼。




頬に触れる衵の髪は、ひんやりとしていて。


どのくらいここで、一人で、涙を拭っていたのだろうと思った。






――――すきだった。






別の人を想っていると知っていても。


誰にわからなくても。

叶わなくても、見えなくてもいい。







ただ、本気で。



本当は。




想っていた。









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