理想の都世知歩さんは、








その夜は、静かに雪が舞う夜になった。




初雪だった。




雨が降れば水たまりができて、覗き込めば青空が見える。


雪が降れば積もって、青空によく映えて光を足す。



けれど中には、水たまりにならない雨もあって降り積もらない雪もある。




この夜の雪は、降り積もらない雪かもしれない。



底に落ちて、音もなく消えてしまう。




綺麗だった。




積もらない雪。



あっという間に消えてしまう冷たい小雪のお陰で、暗闇も見上げられる。





「ありがとう…」




消えてしまう言葉は、脆くて、やさしくて。



何処までも白く、温かい。











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