理想の都世知歩さんは、




「あとさ、衵」



仕切り直すような声が投げ掛けられて。

顔を上げた先、真っ直ぐな都世地歩さんの視線と交わる。


「俺、待ってていいの」


「え、なにを…」


「待つっていうか。聞きたい」




――突然、春風が。



巡ったような。




都世地歩さんは笑みを湛えてそっと傍に寄った。


私はただ、それを見上げて追い掛けて。

目の前でしゃがむ彼を見下ろせば、くちびるが震えた。



ダイニングテーブルに都世地歩さんが乗せた左腕。


肘のところの小さな傷。



「衵。この前、起きてた?」



この、前……。


何か、言わなきゃ。

待ってる。



「で、でも」

「うん。ちゃんと終わった。それから少しずつ」


私には都世地歩さんの眸が、ごめんと言うような理由が分からなかった。


「確か、初雪の日?もう三か月くらい経つけど、衵と会った日」



ありがとうって笑う都世地歩さん。


知らなかった。





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