理想の都世知歩さんは、
「それだけ考えておきながら、『幸せになる』だけ?」
何がツボにハマったのかわからないけれど、ひーひー言いながら笑う都世知歩さんの笑い顔が幼い。
「俺以上に絶対編集向いてない」と言われてしまった。
「だって衵に書かせたら、一行目に『皆幸せです』って書いて終わりそう」
そんなに!?
で、でもまあ、満更でもない…。
「って私のことはいいから!」
「あー…俺もそういう小説よみたい。たった一行でいいから。そしたら絶対一生大切にするのに」
「はいはい」
ほろ酔い都世知歩め、いつかそれ衵の名前で出そうとか笑って遊んでる。
「…あれ。それで何だっけ。何の話してた…?」
そして突然真顔になってぼける。
無視無視。
すると彼は残念そうに溜め息をついた。
それから恐らく、ななみさんの口真似をした。
「『初対面の編集さん?にこんなこと言うのもなんですけど、私を“そういう作家”の一人として見ている貴方がいる限り私も貴方をネタのひとつとして見るんです』」
おお…!
「イラッときたんだろうな。そういう作家はいるけど、自分をそういう作家と一緒にするなって目で」
「でもとよちほさん、やさしい目ですね」
「ん?」
「なんでもないです」
わかった。
きっときっと、ななみさんは良い人。
「それでその内知ったのは、菜々美にも想い人がいるってこと」
――?
一瞬、聞き逃しそうになった言葉。
都世知歩さんは切なそうに表情を歪ませ、「そういうもん。だからつらい」と。
ちょっとだけ微笑んだ。