理想の都世知歩さんは、
「じゃあ二人は、住所を共にしているのか…?」
「!」
「は…?ああまぁ、そうだな」
何か嫌だその言い方!!
私たちは三角形に立ったまま硬直しつつあった。
夏彦殿が痺れを切らしたのか、気儘に先に階段を下りて行ってしまった。いかないでください夏彦殿。
やがて、二人の二十歳が同時に喋り出す。
「ゴミ捨てないと」「大学行かないと」
「…。そうしてください」
二人の二十歳は一緒に頷いて、狭い階段を一緒になって降りて行った。
不思議な温かいような光景だった。
そして。
ゴミを捨てて戻って来た都世知歩さんは間に合ったか尋ねた私に頷き、尋ね返したのだ。
「貴堂サンが来てた服の色を髪色にすると何ていうの」と。
「髪色?りっちゃんが着ていたのをですか?…マーメイドアッシュとか?」
疑るようにふうんと言う彼を見上げる私。
それに気付いた都世知歩さんは、「何だよ」と少し照れくさそうにして、それから。
ちょっぴり気まずそうに口を割ったのだ。
「菜々美の髪色が、ああいうのだから。何ていうのかと思っただけだよ…わるいか」
って。
どうしてかこっちが赤面してしまうほどに愛しそうに。
そうしてやっと、冒頭に戻る。
事前にそういう会話があったから、左谷さんが迎えたお客様を見て、もしかしたらと思ったのだ。
どうやらその予感は的中したらしい。
目が合って――――愛らしく笑顔を魅せてくれた“ななみさん”がそのひと。
都世知歩さんが夢の中で呼んで、
『恋の人』と例えて、
『つらい』と、口にした――――――大切な、
大切な、
ひとだった。