理想の都世知歩さんは、




それからの三日間は、ちょっとだけ。
長いように感じた。


お店に出向く合間に二雲と会って買い物したり、実家に帰ってお父さんとお母さんに抱きつかれたり、左谷さんと夏服に向けての打ち合わせをしたり、彼が帰って来る三日目には実家で会わなかった兄と会ったり。


身体は動き回っていたけれど、家に帰った時は寂しかった。


勿論ご飯の用意も一人分で済むし、洗面所は悠々と使えるし、お風呂もビクビクしたり急かされたりしなかったけれど。

洗い物はいつもより早く終わってしまって、後は少しだけ夜が怖くなった。


彼が居るという安心感が家中至る所に在ったことに気付いて。

見えなかったことがありがたく思えた。


本当はこうだったんだなぁって何度か思うことがあって、そうしたらもう、『こう』じゃなくてよかったって思っている自分がいた。

たった一ヶ月、毎日居ただけなのにね。

二日目の夜は寂しさ余って、誰もいないけどこっそり都世知歩さんの部屋でテレビをつけた。


三日目の、兄ちゃんと言えば。


会ったカフェで『一人暮らしで怖いことなかったか』と『物騒なことも多いから』と呟かれた時には心臓が痛んだ。

あまり思い出したくない問題だ。





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