初恋は雪に包まれて
「伊東くんが……私のこと……。」
「うん。」
「……信じられない。」
チラッと彼の顔を見上げる。彼の瞳は真っ直ぐ私を見下ろしていた。
あぁ、この真っ直ぐな瞳が嘘をついているなんて到底思えない。
伊東くんはいつも無愛想で、何を考えているかわからなくて、私のことなんてどうでもいい存在なのかと思っていた。
正直言うと、仕事以外でこんなに話をしたのも今回が初めてなのだ。
「……どこがいいの……?」
「ん?」
「私なんて、地味で、普通で。仕事だって出来るわけじゃないし、良いところなんて何もないんだよ。きっと私と恋愛しても楽しくないよ。そもそも私なんかじゃ伊東くんには釣り合わないよ……」
そうなのだ。
「無愛想」「何を考えているかわからない」と言われながらも、そんな言葉の後には必ず「でも仕事は完璧」「見た目も綺麗すぎて近寄りがたい」と続く彼だから。
彼が私を好きになるなんて、誰も信じないような話なのだ。