初恋は雪に包まれて
「小山!」
そこで聞こえたのは、なかなか聞くことのない伊東くんの大きな声だった。
彼が少し早足で私に近付いてくる。なんだろう、という考えが頭に浮かんだ頃には、彼の右手が私の腕をしっかりと捕まえていた。
「小山は、」
「伊東くん……?」
「小山は、そういう相手じゃない。」
伊東くんは田嶋くんにそれだけ言うと、彼は私の腕を捕まえたまま足早に歩いていく。
「伊東くん、まって、なにっ……」
「煩い。」
「えっ……ちょっと、まって、ってば……」
悔しいくらい長い脚が、スピードを緩めることなくスタスタと歩いていく。その脚の持ち主に引きずられるように小走りなる私の脚。
やっと彼の脚が止まった場所を見渡すと、そこは大通りから少し入った静かな路地裏だった。