月光-ゲッコウ-
仕事モードは紳士な感じで、まったく逆なのになぁ。
こんな傲慢な人だとは絶対みんな気づかないんだろな。
時計に目をやると、もう22時半すぎだった。
『そろそろ帰ります。今日はありがとうございました。』
「泊まっていけよ。あ、勘違いするなよ?おまえだけでって事だ。安心しろ。」
別に勘違いとかしてないし…
1人なら少し泊まりたいかも。
月を1人でゆっくり眺められる。
でも、朝は社長を迎えに行く日課がある。
安易に泊まれない。
加雁さんにそう説明すると、またため息をついた。
「夜這いしてやろうと思ったのに、しょうがないな。じゃあ、自宅まで送ってやる。」
少し乱れた髪の毛を手でくいっと直すと、加雁さんはあたしの手を握った。
「ま、これぐらいは許せよな?」
そう言うと、あたしの手をひいて駐車場まで向かった。
手ぐらいっか。
さすがに手繋いだぐらいじゃ、怒らない。
たとえ今日、加雁さんと一夜を共にしたとしても。
あたしの心はそこにない。
ただ、暗闇があるだけ…