月光-ゲッコウ-
駅に着くと、麻生さんにメールをうつ。
〔最後のわがまま聞いてください。…社長をお願いします。〕
しばらくすると、返事がきた。
〔自分の道を決めたのね。社長の事は私が責任をもって、どうにか説得するわ。幸せになってね。〕
麻生さん、ありがとう。
ちょうど電車がくる。
あたしの向かう先は、加雁さんの会社…。
すべての事を話すのは怖い。
けれど、逃げないと決めた。
目的地に着くと、まずムーンをペットホテルに預けて、荷物をコインロッカーへといれた。
そして携帯ショップに行き、携帯を解約する。
何も連絡せずにここまで来た。
社長の別宅で、麻生さんに会ってから久しぶりに携帯を見ると
加雁さんの着信とメールで埋まっていた。
〔何かあったのか?〕
〔どこにいる?〕
〔信じて待ってる。連絡くれ。〕
〔心配だ…不安だ…どいして連絡をくれないんだ〕
たくさんのメールに愛を感じた。
あたしを信じて待ってくれてる事が嬉しかった。
今会いに行くよ。
加雁さんの会社へとあたしは歩き始めた。