月光-ゲッコウ-
麻生さんが訪れてから5日後。
あたしは体調も良くなり、ベッドの上での生活ではなくなった。
元気になり、話す様になったあたしを見て、社長は喜んだ。
「今日は少し本宅に帰らなければいけないから、遅くなるけど帰ってくるから待っていてくれ。」
仕事に行く時に社長は言った。
あたしはにっこり笑ってうなずいた。
社長…
今まで…ありがとうございました。
あなたとの約束は守れません。
あなたと一緒にいる事は出来ません。
あたしの幸せはあなたと一緒にいる事じゃない。
社長が出掛けると、荷物をまとめた。
「窮屈だけど、少しこの中に大人しく入っててね。」
社長がムーンを連れて来てくれたから、置いていかなくてすんだ。
荷物を手にもつと、ベッドの上に手紙を置いた。
社長宛ての手紙。
これを見て、どうかあたしを探さないで。
愛してはいなかったけど、小さな命を授けてくれてありがとう。
家政婦に見つからない様に家を抜け出すと、駅へと向かった。