翼のない天狗
「でも清青様、」
 今度は氷魚の番。

「二十年……二十年経ったらきっと、必ず会いましょう」
「ああ」
 清青は力強く頷く。

 そして夜が明け、氷魚の体は人魚のそれとなった。
「きっと、きっとです」
 逃げるように泳いでゆく氷魚の姿を、清青は見送った。入れ替わるように見張りも人魚の姿で戻る。


 二十年。
 年を経るにつれて技の洗練されて行く天狗にとって有難い時間で、ゆっくりと年を経る人魚にとって気にするような時間ではない。しかし、長い。長い。


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