キミのための声






建吾くんはニコッと微笑んで、



「アイツ別に、怒ってるとか
あんまりないじゃん?」



「え…そうなの?」



喧嘩も何もしたことないから、
よく分かんないや。




「ブチギレて殴るか、
平然としてるかどっちか」




そう言って建吾くんは笑うけど、
あたしはブチギレて誰かを殴る
葵くんを想像してゾッとした。




「だから、普通に話しかけて
出来たら謝るって感じでさ」




「うん…」




「まぁほんとは謝る必要
無いと思うんだけどね~。
アイツの言葉が足りないから
そうなっちゃったわけだし」




ギッとイスに寄りかかって、
「ほんとアイツだめだな~」と
呆れたように笑って言った。




……葵くんがそんなに
少食だなんて知らなかったな。



あたし、毎日あんなに
おっきいお弁当箱ぎっしりで……



かなりキツかったはずだよね。




……あれ?けど葵くん




確か毎日―――……





「…毎日、完食してくれてた」




「え?」




「お弁当、毎日きれいに
食べてくれてたっ!」




建吾くんは少し驚いた顔をして
あたしを見る。




「そうなの?」




「うん!」




「ははっ、なんだかんだ
美味くて完食かよ」




「そっ、そうかな!?」




「絶対そうだよ。
あとはやっぱり、毎朝
頑張って作ってくれてんのに
残すことなんて出来ないよ」




自分でも分かりやすく
みるみる笑顔になる。




やっぱり、ちょっと
優しいところあるんだよね!




「ふふっ!」



気持ち悪い笑い方をすると、
建吾くんはただ優しい笑顔で
あたしを見ていた。



その笑顔は、やっぱり
すごく柔らかくて。



明るい茶髪も複数のピアスも
柔らかい印象は与えないのに、



建吾くんは何か違う。



絶対モテる、この人。




「…なに、そんなに見ないでよ」



「あっごめん!」



「はは、いいよ。
とりあえず頑張ってね」



「うんっ!」



大きく頷いたあたしの頭を
温かい手でポンと叩いて、
ギィッとイスを引いて立ち上がる。



「俺これからバイトあるから、
そろそろ行かないと」



「あ、そうなんだ!
なんかごめんねっ?」



「全然。何かあったら
またいつでも言ってよ。
晃平伝いでもいいし」



「うんっ!」





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