キミのための声





あたしもつい
着いて行きたくなるけど、
それじゃなんのために由香が
勇気出して行ってくれたのか
分からなくなっちゃうよね。




こっそり顔を出して、
いまだうずくまったままの
男達とそこへ向かう
勇敢な由香を見守る。





「―――ちょっと
アンタ達、大丈夫っ!?」




あたかも今この現場を
見たかのような言い方に、
思わず拍手したくなる。




「………あァ…?
…んだ、テメェ……」




しゃがれた声で、
腹部を押さえながら
顔だけを上げる男。




……この人達も正直、
かなりガラが悪い。



喧嘩、強そうなのに…




「何があったの!?
誰にやられたのよっ」




その男の目線に合わせるように
屈み、問いただす。




「……アンタ…あいつと
同じ学校じゃねぇか、その制服……」




「え!?あいつって誰よ!?」




腹部が相当痛むのか、
男は「くっ…」と苦しそうに
顔を歪めながら
なんとか仰向けになる。




「はぁっ……
滝澤 葵とかいう奴だよ…
あいつ意味分かんねぇっ…
肩ぶつかっただけでこれだぜ」




そう言って、悔しそうに笑う。




……肩がぶつかっただけで




5人も殴ったの…?




「……そうなの…」



「クソッ!!
あんな奴にこんなザマ……
まじで気に入らねぇっ…」



同情するように男を
見つめる由香と目を合わせて、



「お前っ…このこと
言いふらしたりすんなよ…
あいつ1人にこんな
やられたことバレたら―――」



「そんなの分かってる。」




クソッ、クソッ…と
何度も悔しそうに砂利を
殴るようにする男を背に、
由香が戻ってくる。




……すごい、由香。



あんな普通に話せちゃうんだ…




「……学校、戻ろっか。」




緩く微笑んで言う由香に、
頷いて立ち上がる。




…まだ、足が震えてる。




さっきのこと



まだ嘘みたい





葵くん




どうしちゃったの……?







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