夢ノ夢子のズルい罠

頬を膨らまし、夢子は顔を背ける――。


通常、この可愛い仕草――夢子にとっては「標準的」な動きで、大抵の男子のハートを鷲掴み、握り潰し、血飛沫を飛ばす事など容易い筈なのだが、コウイチにはこの手の「誘い」は全く通用しない――。




「どういう訳か、昔から夢子だけは描けないんだよなぁ――」


コウイチが首を捻る――。



「何か、負い目とか、皆に隠している事でもあるんじゃないか――」


「そうやって、いつも責任転嫁してっ――別に隠してる事なんてないわよっ――」


「そうだといいんだけど――」




「夢子ぉーっ、今日の現国の課題っ、ノート見せてぇ――」


「あっ、いいよ――」


何処か繕った夢子が、コウイチから離れ、鞄からノートを取り出す――。


容姿端麗――更に、頭脳明晰――。


夢子の学力ポテンシャルは、学年で常に3位以内を確保し、クラスのモブ子達に「善意」を施す事で、要らぬ摩擦を巧みに回避する――。


モブ子達も、夢子を利用する――男には理解し難い、女同士の相互利用――。


穏やかな、「表層世界」の日常――。


深層世界の日常は果たして――。

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