キミとの距離は1センチ
「ちなみにその人、珠綺ちゃんも知ってる人だよ。もともと量販営業部にいた、中島さん」

「ナカジマさん……って、え、あの中島さん?!」

「あはは、たぶん今想像してる人で合ってるかな」



あっけらかんと笑う宇野さんを、わたしは呆然と見つめる。

……中島さんは、わたしが本社に来たとき、1年間だけ一緒に量販営業部にいた先輩で。

背の高い宇野さんよりもさらに大きくガタイのいい人で、顔もなんていうかごつくてワイルドだから、いろんな人に『クマ』ってあだ名で呼ばれてた……。

……え、ほんとにあの中島さんが相手なの?



「まあ、そういう反応しちゃうよねー。で、だ。中島さんは、今九州支社にいるんだけど」

「あ、そうだ。わたしが来てから、1年で転勤になったんですよね」

「うん。中島さんがいなくなってから、俺もずっと、九州支社に異動の要請を出してたんだけど」



にっと、宇野さんがイタズラっぽく口角を上げる。



「このたび、九州支社への転勤が決まったってわけです」

「おお……」



彼のその熱意に、なんだかわたしは感動すらしてしまう。

そっか……すきな人を追って、転勤までしちゃうんだ。

さすが宇野さん、やることもビッグです。
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