キミとの距離は1センチ
にっこり、宇野さんがまた、極上の笑顔を浮かべた。



「今までずっと黙ってたけど。実はバイなんだよね、俺」

「………………はい?」



あまりにも唐突に飛び出した、一応耳にしたことはあるけれど聞き慣れないその単語に、わたしは思いっきり間抜けな反応をしてしまった。

そんなわたしを見て勘違いしたのか、さらに宇野さんは畳みかける。



「ああごめん、バイって知らないかな。両性愛者……つまりまあ、男も女も両方イケるってことなんだけど」

「し、知って、ます、けど」



そう、知ってはいたし、理解もしていた。世の中にはそういう人も、いるんだってことは。

けど、え。こんなに、身近に……ていうかそれが、わたしの彼氏、だなんて。



「そっか。でね、こっから珠綺ちゃんには、本当に申し訳ない話なんだけど。実は俺、何年も前からずっとすきな人がいるんだ。その人は、男の人なんだけどさ」

「…………」



……次々に明かされる衝撃の事実たちに、頭がついていかない。

ちょうどそのときお冷やが来て、そのうちひとつのグラスを、宇野さんがわたしの方に差し出してくれた。
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