キミとの距離は1センチ
グラスの中の氷が溶けて、カランと音をたてた。



「珠綺ちゃんは、全然俺に、『恋』しなかったよね。現に今も、一応別れ話したっていうのに、おいしそうにデザート食べてるし」

「……わたし、は……ちゃんと、宇野さんのこと、すきでした」

「そうだね、『好き』は『好き』なんだろうね。それはちゃんと、わかってたよ」



苦笑した宇野さんが、ひょいっと、わたしからスプーンを奪ってゆずシャーベットをひと口食べた。

これおいしいね、と言って、またわたしの手の中にスプーンを戻す。



「俺もね、ちゃんときみに、愛情はあったよ。だからほら、セックスだってできたわけだし」

「………」



いくら個室とはいえ、こんなところで、宇野さんなんてことを……。

そうは思うのに、抗議の言葉が出て来ない。

うつむいたまま、どうしてか、顔を上げられない。



「でも、『恋』じゃなかった。その点は、珠綺ちゃんも俺もどっちもどっち。お互い、利用し合ってたんだよ」

「り、利用、なんて……そんなの、わたしは、」

「そうかな。きみも俺を、利用してたと思うよ」



意味ありげに微笑む彼を、わたしは呆然と見つめる。

……利用? わたしが、宇野さんを?

わからない。でも、少なくとも宇野さんは、そう感じていたの?
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