キミとの距離は1センチ
「み、都サン」

「あん?」

「す、『すき』って、なんでしょう……」

「……マジで言ってるの? え? あんたの恋愛偏差値は小学生以下なの?」



思いきって訊ねてみたのに、都にはものすごくドン引きされてしまった。

し、仕方ないじゃん……わたし実は、今まで付き合った人って宇野さんがふたり目だったんだよ。

しかも最初の人っていうのが、大学生のとき、なんとなく流れで付き合った同級生となんとなく自然消滅したって感じで。

ほぼ、恋愛経験皆無のわたし。この歳になって、“誰かをすきになる”ことがわからなくなるとは……。



「……ねぇもしかして、珠綺ってまだ、宇野さんに未練あったりする?」

「え、それは違うよ。宇野さんのことは、わたしだって応援してるもん」



神妙な顔をする都に、わたしはあっさりと答えた。

あまりにも迷いのない即答だったからか、彼女はなんだか面食らったような表情をする。



「ふぅん……ま、とにかく今までさんざんサボらせてきた恋愛脳働かせて、伊瀬くんのこと真剣に考えてあげることね。明日も顔、合わせるんだから」

「……あい……」



そうは言うものの、まったく、自分の気持ちがわからない。

それに、これだけ都に後押しされることを言われても……少しだけ、伊瀬の告白を疑ってもいた。

……わたしは、伊瀬にすきになってもらえるような女じゃないよ。付き合った人を無意識に利用するような、ダメなやつなんだよ。

伊瀬にわたしは、もったいないよ。


その日の夜は、いつもより早めにベッドに入ったけれど。

だけどわたしをすきだと言った伊瀬の顔が何度も頭に浮かんできて、なかなか寝付けなかった。
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